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そうだな、その場合はあんたを名指しの方がらしいかなと思う。他の見世からしたら、潰したいのは間違いなくあんただろうからな。 その見世の遊女が強請っただとかで、流れ流れてその見世が子犬の所有権を持っているのもいいかと思う。うちに連れてこられたら俺を押し留めるためだとか、あんたへの脅しにも使えるしな。 最終的には俺たちでなんとかするもいいし、高瀬の爺さんに介入してもらうでもいい。その犬を回収してうちの見世に置く流れが綺麗じゃないか。俺の心労は酷いが。 ―――― (自身の仕事に不満などなく常日頃より真面目に働いていたが、機嫌がいいせいか普段はなるべく下げている顔を無意識に上げたまま見世前に立っていたため、無表情の傷顔を晒したまま警備することに繋がり。妓夫に連れてこられた初顔の客達がたまたまこちらを見た時にギョッとした顔をされたり、馴染みに、お前の顔始めてまともに見たなぁ、などと声をかけられたりしつつ、先ほどの喧騒などなかったかのような平穏な夜を過ごし) ……っ!も、申し訳ございません……。 (客の入りはとっくに絶え、後は諍いか駆け落ちでもない限り出番はなく、すっかりと静かになった通りから東雲の空を眺めていたが、見世の入口の方から聞こえてきた、きゃふんっ、という人の喉から発せられるのとは明らかに違う鳴き声を耳にした途端思わず横に飛び退きつつ後ろを振り返り、その先にいた驚いたような顔をした老人と一瞬で殺気立った供を見留めた瞬間慌てて膝をついて頭を下げ。なぜこの時間帯にもあの畜生は起きていやがるんだと半ば八つ当たり気味に考えながら、地に頭を擦り付ける勢いで固まっていれば、頭上から「よいよい、そんなことせんで。こやつの声に驚いたんだろう。何をされたわけでもないんだ、お前らも許してやれ」と寛容な言葉を投げかけ笑って去っていった上客に、身体の向きを直して再度頭を下げて見送りつつ、酔漢どもの相手より肝が冷えたと細く息を吐いて、客が全員帰ったら早く寝てしまおうと心に決め)

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