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[6] レグルス
場所は港町からも離れた海岸線、その誰も寄り付かないような岩礁の一角。天然の隠れ家とでも言うべき洞窟の中の、広く開けた場所で陣を描いて召喚の儀を執り行う。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
召喚陣は青白く輝きを放ち、渦巻く力の膨大さを示すように大気は乱れ、洞窟内に大きく唸る声が響いていく。かき消されてしまいそうな音の中でもよく響く声で、座の英霊達へと届かせるように詠唱を紡いでいく。
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。……繰り返すつどに五度……ただ、満たされる刻を破却する……」
儀式を通して英霊の座と繋がりつつあることで、自分の中の闘争本能が歓喜の声をあげる。かつて味わったことのない高揚感を無理やり抑え込み、深く深く意識を深層へと潜り込ませて英霊とのつながりを掴み取らんとする意思の表れか、無意識のうちに腕を召喚陣へと伸ばされる。
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えるがいい。
誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者!」
はっきりとした大きな何かとの繋がりを掴み取った確かな感触。拳は軋むほど固く握り込まれ、瞑想をするように閉じかけていた目は大きく見開かれる。口端は吊り上がり、本能の表す歓喜に任せ、朗々と勢いをつけて詠み上げていく。
「汝 三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手!」
最後の一押しとばかりに召喚陣へと一気に魔力を送りつける。儀式の成功を直感と理性で確信しながら、強くなる光と暴風を物ともせずに受け止めて、その中心を目に焼き付けるように見つめ続けて。