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[2] オリーヴ
コンコンコン、ドアをノックする。こもった音でどうぞ、と聞こえた。か弱い少女の声だ。
礼を述べて部屋に入ると、八畳ほどの部屋に横柄な態度で居座る大きなベッドから、顔だけ出して横たわる少女を見つけるのはそう難しいことではなかった。
--いらっしゃい……あなたが、お手伝いさん?
銀髪は白磁の陶器の如。北洋のように深くどこか昏い碧眼。頬へ指を伸ばすようなケロイドですら美しい、少女。
頷いて答える。
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--まって……
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--ふとん……めくって……
事情を知らずとも察せられる、覚悟の間隙。意を決されたのだろう。頑なにブランケットを掴んでいた左手は緩み、その下へ潜っていった。
ブランケットをめくる……
--あなたには、見ておいてほしかった……から……
驚いた。左半身にベッタリと張り付くケロイド、左腕以外のない四肢……では無い。それは雇用の段階で知らされていたことだから。
そう、何より驚いたのは、彼女が纏っていた布は、腹部と右腕、両足に巻かれた包帯以外にひとつとしてなかったことだ。
意図を尋ねる。
--それは…………あなたにはこういう事も……頼まなきゃいけないから……
ふわりと桃園を思わせるような匂いが漂う。
瞬間、背徳感と支配感が凄まじい勢いで背筋を這い上がり、ぎゅっと心臓を掴んだ。ぞくりと体を震わせる。
--よろしくね……あなたのお名前、きかせて……?