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[61] 歌い手
<語り手>
夜の風をきり馬で駆け行くのは誰だ?
それは父親と子供
父親は子供を腕にかかえ
しっかりと抱いて温めている
父親:「息子よ、何を恐れて顔を隠す?
お父さんには魔王が見えないの?
王冠とシッポをもった魔王が
息子よ、あれはただの霧だよ」
魔王:「可愛い坊や、私と一緒においで
楽しく遊ぼう
キレイな花も咲いて
黄金の衣装もたくさんある」
息子:「お父さん、お父さん!
魔王のささやきが聞こえないの?」
父親:「落ち着くんだ坊や
枯葉が風で揺れているだけだ」
魔王:「素敵な少年よ、私と一緒においで
私の娘が君の面倒を見よう
歌や踊りも披露させよう」
息子:「お父さん、お父さん!
あれが見えないの?
暗がりにいる魔王の娘たちが!
息子よ、確かに見えるよ
あれは灰色の古い柳だ」
魔王:「お前が大好きだ。可愛いその姿が。
いやがるのなら、力ずくで連れて行くぞ」
息子:「お父さん、お父さん!
魔王が僕をつかんでくるよ!
魔王が僕を苦しめる!」
<語り手>
父親は恐ろしくなり 馬を急がせた
苦しむ息子を腕に抱いて
疲労困憊で辿り着いた時には
腕の中の息子は息絶えていた・・かに見えたが
魔王:「その症状は・・・いけない!! 早く 我が城に少年を連れてくるのだ!!
手遅れになるぞ?」
<語り手>
城に着くと 息を切らせ走り寄り鬼気迫るような魔王の表情 ようすがおかしい どうやら 魔王は悪者ではないようだ
父親:わ、分かりました
<語り手>
魔王の表情に事態が 急を要する 事が分かり 急ぎ城の中に息子を連れて行くと ソファーに寝かせる様に言われ寝かせると
魔王:「・・・苦しかっだろう・・可哀想に・・これを飲めば助かるぞ」
<語り手>
恐ろしげな服装とは正反対に なんと魔王は苦しむ少年を見た 瞬間に涙を流し 薬草を組み合わせ作った 薬を少年に飲ませると 少年の病状は たちどころに良くなり 熱は完全に下がったのだった
父親:おお・・・ 奇跡だ・・・ ありがとうございます