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[16] シュトゥルエ
 この塔は崩れない。経年劣化? してる筈。  それでもこの塔は崩れない。  暦の感覚も無くなった。  いつからだろう。わたしの見ている物が全て黒ずんだのは。見渡す限りのお空が真っ白になったのは…………。  わたしはしなない。  オトウサンに育てられて、このまま大きくなって空を走れる。そう思っていた。 「………………ぅ」  ひとりぼっちで過ごすには広い塔で。  …………考えても意味がないと動きを止める。  ◇◇◇◇  清潔なベッドに背を預けている角の生えた少女が独り。この少女もこの塔の部屋も白く清潔。何もかもを拭い去る様な白さの少女はこの世界の最高峰に位置する種族、“竜種”そのお姫様であった。  並べて世はこともなし。  頑丈に作られた石ブロックを絡ませて建てられた塔は魔王の城が可愛く見える程に遥か高く、神々しさを纏っていた。  その塔の真下には門番の竜骨が残っている。  竜骨は過去の強大さを思えば酷く哀れに地を這っている。少しの衝撃を加えれば忽ち崩れて土に還るのも容易に想像出来る。  世は魔王軍と人間の争いを経て到頭エンディングを迎えてしまった。  不老不死の隠蔽を図った竜種の目論みは看破され、既に姫の血が生物を高次元に至らせる強化素材であると世界中の有力者に知れ渡っている。  しかし其れ等を知る由も、以ての外知る術も無かった。呪われ人類種に堕とされた竜のお姫様『シュトゥルエ』にとっては、目に見える総てが何も変わらなかった。  塔は聳え立つ。入り口も無ければ階段も無い。強いて言えば石の継ぎ目があるぐらいだ。これを自力で登り切るのは人間には出来ないだろう。

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